――研究用や水族館への納入だと、捕獲したときのデータなども求められますよね。

 何月何日、水深何メートルでどういう方法で捕って、採取したときはどのような状態だったか、詳細なデータを出さなければなりません。

 正確さが求められますから、相手の業者や漁師の言い分が怪しいと思ったら、船に同乗させてもらい、自分で調べることもしました。大変な手間でしたが、結局は現地で生きものを見てきたことが、後々いろいろな面で役に立っています。

――現場仕事が役立った何か良い例はありますか。

 うちの深海水族館にもいるヒカリキンメダイなどは、その好例ですね。
 沖縄の美ら海水族館から注文を受けたときです。ヒカリキンメダイは昔、沖縄の海で捕れたけれど、今は捕れないので海外の業者から買い入れてみた。ところが、水槽に入れると光らないというんです。

 さらに話を聞いていくと、水深200m~400mに棲む魚だから、水槽の設定温度をその水深の生息データに合わせたというんですね。でも、僕はフィリピンの海で、ヒカリキンメダイの群れがエサを捕食するために、海面近くまで上がってきて光っているのを、現場で見ているわけです。

 海面付近の水温は、26度~28度もある。水槽の設定温度を上げてみるようにアドバイスしました。すると、ヒカリキンメダイが光り出したのです。

 現地の人からただ聞いた話や、本に載っている情報では、飼育がうまくいかないことが多い。1個体3000円で、たくさんの場数を踏んでわかったことがたくさんあります。

ヒカリキンメダイ。眼の下に半月板の発光器があり、発光バクテリアが共生。この発光器を回転させ、光を点滅させる(写真提供:沼津港深海水族館)(写真クリックで拡大)

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