第3回 シードラゴンの全滅で築いた信頼

――独立して始めた海洋生物の納入業。博物館や大学の研究室から依頼される1個体、3000円の仕事はどういう内容だったのですか。

 ウモレオウギガニという毒をもつカニがいます。その毒性を調べている先生がいて、中部太平洋、インド洋、日本近海それぞれのウモレオウギガニがほしいというんですね。各地の海域によって食べる生物が違うだろうから、毒性にも違いがあるはずだ。それを調べたいから、そろえてほしい。たとえば、そんなふうな依頼です。

――研究用のサンプルだから、数は多くないですよね。

 それぞれ2個体ずつ計6個体、合計1万8000円です(笑)。同じ地域で成長段階の違うツバメウオをという注文もありましたね。5個体で1万5000円。

 お金にはならないけれど、納入するとできあがった研究レポートがもらえました。それを読むのがおもしろくて、楽しかった。

 そういうのを続けているうちに、だんだん注文も増えて、生きているサンプルがほしいというオーダーも舞い込むようになりました。それで少しずつ水族館への生体納入が増えていったのです。

 けれど、求められるのは一般に流通していないものや、珍しいものばかり。それまでのペットショップ卸で扱うものとは、まるで違っていましたから、入手ルートも新しく開拓しなければなりません。

 現地の業者は、ペットショップが相手の商売ですから、僕は「売り物にならないようなものばかり買いに来る変な日本人」と思われていました(笑)。

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