それは美しく輝いていて、優しく丸みを帯び、そしてどこか気高く、まるでストーブ界のクィーンだ。

 そのストーブには、フライパンや鍋を置くことができる調理部分の他に、湯沸し、保温器、そして、なっ、なんと! オーブンがついているのだ。

 私は、料理が大好きなので、オーブンには、目がハートの形になってしまう。

 そしてこれまた、このクィーンオブストーブをお買い上げの方には、もれなくアイロンもついてくる! と言った感じで、昔ながらの鉄のかたまりでできたアイロンも付属品として、鍋フライパンたちと共に、ストーブの上に乗っている。

 まあ、アイロンをかけるような服など持ってきてはいないが、この鉄のかたまりのアイロンを見ると、クラシック映画の世界にでも入り込んだような感覚になる。

 もはや、風呂にも入らず、髭も伸ばしっぱなしの粗野で男臭い一攫千金ノスタルジー錆び錆びドラム缶ユーコンストーブよりも、華々しい社交界の蝶のようなこのオーブン付ピカピカストーブに、私の心はもう、エプロンを付けた女の子である。

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「さて、このストーブで、なにを焼こうかしら? アップルパイ? パンプキンパイ?」などと、想像に羽がついてくる。

 名づけるならば、エリザベスストーブとでも呼びたいところだけれど、このストーブの名前を尋ねると、誰もがキッチンストーブとしか言わないので、私は未だに正式な名前を知らない。本当にキッチンストーブというだけなのかもしれない。

 ロッジに移ってからというもの、朝一番に、私はこのエリザベスストーブ(私が勝手にそう呼ぶことにした)に火を入れる。

 このロッジには、お客さんを受け入れたときの業務用的な調理場も備えているが、トーニャと私だけの生活では、このエリザベス様で料理をすることになるのだ。

 さっそく私たちは、パンを焼くことにした。

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