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「生物屋さんとしての素朴な疑問に戻ったんです。内部共生をしていた細菌が、もう、ホストの生物の細胞の中でしか生きていけなくなったら、それは、その生物の外では生きられなくなるということです。共生が進んでいく様子は、我々に、生きると死ぬとの境目をゆっくりと見せてくれているんじゃないかと考えました」

 ヒラノマクラではエラにくっついてた共生細菌が、ホソヒラノマクラでは細胞の中に取り込まれている。そして、シロウリガイでは、取り込むまでもなく、親は細菌を取り込んだ状態の子供を産む。そしてその先には、かつては共生という状態にあった細菌を、自分の体のパーツとして扱う動物が出てくるかもしれない。
 それはつまり、貝と細菌と、ふたつあった生命が、ひとつの生命に、融合するということだ。

「でも、本当にゆっくりなので、僕が生きている間に、その境目がわかるかというと、そうはいかないと思いますけどね」

 藤原さんの目下の関心事は、なにか。いろいろあるのだが、ふたつだけ紹介してもらう。

 まず、ヒラノマクラである。

 いろいろな海域にいるヒラノマクラ。どこで採集しても、分子生物学的に同種と呼べる共生細菌を持っているという。

「同じ機能を持つ細菌はほかにもいるのに、です。ということは、ヒラノマクラには、その特別な細菌だけを認識するメカニズムがあると考えられます。そのメカニズムを知りたい、というのがあります」

 それから、もうひとつは。

「クジラの遺骸を沈めてその直後の様子を観察していて、それまで自分たちが見ようとしていなかったものがあることに、気がつきました」

 それは何ですか?

「深海の生態系における、トップ・プレデターです」

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