File7 深海生物研究者 藤原義弘

第3回 これまで見ていた深海は「ライオンのいないサバンナ」だった

海底の鯨骨にやってきたイタチザメ。(提供:藤原義弘/JAMSTEC)(写真クリックで拡大)

「ある海域のトップ・プレデターの顔ぶれや生息密度がわかれば、その海域の真の環境収容力、すなわちある環境にどれぐらいの生物が存在することができるのか、がわかるかもしれません。また、これまで比較的研究の進んでいる深海底に暮らす小さな生き物との関係を明らかにすることで、今まで見えていなかった深海の様子が、見えてくるんじゃないかなと思っています」

 一歩進むと、それがまた次の疑問を生みそうですね。

「イタチザメっていう人食いザメがいるんですけど」

 恐ろしい。

「普段は表層にいるんですが、500メートルくらいのところに沈めたクジラの骨を喰いに来るんですよ」

 わざわざ500メートルも潜って、ですか。

「ということは、深海の生態系は、深海だけの生態系じゃなくて、縦の方向に、もっと広がりを持った生態系なのか、そうではないのか。そういうことも、わかるようになるんじゃないかと期待しています」

 クジラの骨は、多様な生物を集めているだけではなかった。進化の過程、深海の生態系、生死の境、まだまだわかっていないたくさんのことを解明するヒントも、鯨骨の周囲に群集している。藤原さんが夢中になる気持ちも、わかる気がしませんか。

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この記事は日経ビジネスオンラインとの共同企画です。
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片瀬京子(かたせ きょうこ)

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、09年よりフリー。共著書に『誰もやめない会社』(日経BP社)『ラジオ福島の300日』(毎日新聞社)など。