File7 深海生物研究者 藤原義弘
第1回 深海生物フォトグラファーの表の顔は
いえいえ、どうやったらこんな素敵な写真が撮れるんでしょう。
やはり、ここ横須賀のオフィスに、専用の撮影スタジオなどがあるのでしょうか。
「いえ、撮影は船の上でしています」
なぜなら、そうしないと、イキのいい状態が撮れないから。有人または無人の探査機が、深海から連れ帰ってきた生物を、船上で撮影しているのだ。
イキのいい深海生物を撮るために
とはいえ、釣りの名人が船上で獲物と記念写真を撮るようにはいかない。
シャッターを切るまでに、時間がかかる。ほかにやらなくてはならないことがたくさんあるからだ。
「最初に我々がするのは、ソーティングです」
つまり仕分け。
深海から引き揚げられたモノは、泥に覆われている。そこに生物がいるかどうか、目で見てすぐにわかるモノばかりではない。なので、泥ごとを文字通りふるいにかける。ふるいの細かさは1ミリ、0.5ミリ、その5分の1の100ミクロンと、だんだんと細かくなっていく。
何種類かのふるいを使って仕分けをしたら、どのふるいにかけたものなのか、あとからでも分かりやすいように整理する。整理が終わったら、今度は試料の固定や解剖と、この時点では、写真よりも、後々、研究時に混乱を起こさないための下準備が優先されるのだ。この作業に、何時間もかかる。
「途中で食事をしたりしますから。探査機が船に戻ってくるのがだいたい午後5時なので、大抵、ここまでで午前1時とか2時とかになってしまいます」
撮影は、この時間にスタートだ。
使う機材は、藤原さんいわく「普通の一眼レフ」とストロボ、10センチ角から45センチ角ほどの水槽、そして、黒いゴムの板である。
黒いゴムの板を中に沈めた水槽に海水と被写体を入れ、レンズを向ける。
この装備にたどり着くまでには、トライアル・アンド・エラーを繰り返した。
最初はどんな風だったのでしょうか。
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