アフリカの生息地の約80%から姿を消したライオン。居住地を広げる人間と共存する道はあるのだろうか。

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ライオンと生きる

アフリカの生息地の約80%から姿を消したライオン。居住地を広げる人間と共存する道はあるのだろうか。

文=デビッド・クアメン/写真=ブレント・スタートン

 遠くから見るとほれぼれするライオンも、すぐ近くで暮らす人々にとっては恐ろしい厄介者。大自然のなかではサバンナに君臨する王者でも、牧畜や農業にとっては、なんとも好ましくない存在だ。

 ライオンは、かつてはヨーロッパや中東にもいた。だが長い歳月の間にその生息域は狭くなり、現在では、ほぼアフリカ大陸にしか生息していない。
 さらに、そのアフリカでの状況も悪化している。最近の調査によると、アフリカの生息地のおよそ80%からライオンは姿を消したという。現時点で何頭生き残っているのか、確かな数字はわかっていない。野生のライオンを数えるのはとても難しいのだ。それでも、この数十年で激減していると専門家たちは口をそろえる。

野生のライオンはなぜ激減したのか

 生息数減少の、原因はさまざまだ。生息地の喪失や分断、獲物となる動物の密猟、それに病気。牧畜によって野生動物の生息地が失われたり、家畜や人間を襲った報復として殺されたりすることもある。マサイ族が行ってきた伝統儀式としてのライオン狩りや、裕福な米国人が行う、持続性などお構いなしのハンティングも関係している。

 ネコ科動物の保護団体「パンセラ」の研究者や、米デューク大学、ナショナル ジオグラフィック協会が共同で取り組む保護プロジェクト「ビッグキャッツ イニシアティブ」などの報告によると、現在、アフリカのライオンは70カ所近くの地域に分かれて生息しているという。このうち、狭くて頭数も少ない地域ではライオンの遺伝的多様性が乏しく、長期的な生存は難しそうだ。いずれライオンが全滅してしまう地域もあるだろう。

 ライオンの減少を食い止め、数を回復させるにはどうしたらよいのだろう。
 面積が広く保護対策が行き届いた、将来的にも有望な生息地を集中的に保護すべきだと主張する専門家もいる。タンザニアからケニアにかけて広がるセレンゲティ生態系や、タンザニアのセルース生態系など五つの地域だ。
 これら五つの生態系には、アフリカのライオンの約半数が生息し、遺伝的多様性を保てるだけの頭数がいる。

月のない闇夜はライオンにご用心

 肉食獣の保護で難しいのは、人間や家畜との共存だ。ライオンと人間が近づきすぎると、両者がともに痛手を負いかねない。人口密度が高い地域の周辺ではライオンが姿を消しつつあるが、保護区に隣接する農地などでは、ライオンが人間を襲う事件も起きている。

 タンザニアで農民がライオンに襲われる頻度は、月の満ち欠けとともに増減する。夜行性の肉食獣であるライオンは、闇夜を好むのだ。
 だが電気や水道のない村の住民たちは、用を足したり、水や薪を取ったりするのに、月のない夜も屋外に出なければならない。時には家の中で襲われることもある。同国政府の統計によると、1988年以降、1000人以上がライオンに襲われている。

※ナショナル ジオグラフィック8月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 「ライオンと生きるとは恐怖と不安の中で生きるということ。畏敬の念などというものは、西洋人だけが持ち得る“ぜいたく品”なのである」。これは、ライオンに襲われて両腕を失った男性について、写真家ブレント・スタートンが語った言葉です(スタートンの肉声は、電子版でお聞きいただけます)。ただ狩るだけのためにライオンを飼育することについて、皆さんはどう思われますか?(編集M.N)

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