第5回 ウナギ取引は不透明 規制強化が不可欠に

 ある種の漁業資源がだめになったからと言って、次々と漁場を変え、近縁種に代替品を求めて大量消費を続け、それがだめになったら、また別の漁場や近縁種を求める。筆者が「乱獲のヒット・エンド・ラン」と呼んでいるこんな漁業によって、タラ類をはじめとする世界の多くの漁業資源が次々と危機的な状況に追い込まれてきた。

 今、ウナギでこれを続けることは許されない。熱帯域のウナギの資源状況や生態はニホンウナギ以上に分かっていないが、フィリピンのウナギ資源はかなり減少していることが既に報告されている。もし、日本の大量消費によってこれらのウナギ資源がだめになるようなことになれば「日本人が世界中のウナギを食い尽くそうとしている」との非難を受けることは必定だ。既にその兆しは見えている。

 ニホンウナギの減少という問題解決の道を、ヨーロッパウナギの大量消費に求め、ただでも悪化していた資源状況をさらに悪化させ、絶滅の淵にまで追い込んでしまった経験を忘れてはいけない。

 短期的な利益にとらわれることなく、苦しいときだからこそ、ピンチをチャンスに変え、長期的な視野に立ち、ウナギ資源の持続可能な利用と消費の実現に向けた改革を進める努力を強化しなければならない。

 繰り返しになるが、そのために残された時間は多くはない。



公開シンポジウム『ウナギの持続的利用は可能か ――うな丼の未来』

7月22日の土用の丑の日に開催される無料シンポジウム。塚本勝巳教授や連載の著者である井田徹治さん、漁業者や養鰻業者も登壇してウナギの今と、これからの付き合い方を語り合います。

開催日:2013年7月22日(月)土用の丑
会場:東京大学弥生講堂一条ホール
会費:無料(どなたでもご参加いただけます)
くわしくはこちらからどうぞ!

井田 徹治(いだ てつじ)

共同通信社 編集委員。1983年に東京大学文学部を卒業し、共同通信社に入社。以降、環境と開発の問題を長く取材、気候変動に関する政府間パネル総会、ワシントン条約締約国会議、環境・開発サミット(ヨハネスブルク)、国際捕鯨委員会総会など多くの国際会議も取材している。著書に『サバがトロより高くなる日――危機に立つ世界の漁業資源』(講談社現代新書)、『ウナギ 地球環境を語る魚』(岩波新書)、『生物多様性とは何か』(岩波新書)など。