第49話 オリバー爺さんの意外な決心

「きっと、あなたの言葉が効いたのよ」トーニャが言う。

「え? なんの言葉?」
「あなた、言ったでしょう? 人は、人を愛して、一緒に生きていくべきだって」
「そう言えば、そう言った……、思わず……」
「だからオリバーは、残りの人生をそうしようと思ったんじゃない?」
「でも…、周りに人がいるほうが、余計に寂しくなるって……」

 いったい、オリバー爺さんにとって、何が最善だったのだろうか。私には、答えが分からなかった。

「もう寂しくないと思うよ」トーニャは言う。
「だって、オリバーは残りの人生を、家族に愛され、愛していくことを決めたんだから」

 そしてトーニャは、再びカウチに疲れた体を倒した。

 私は、オリバー爺さんの姿のないロッジの中を見つめて、オリバー爺さんの新たな幸せを願っていた。

 きっと今頃、サンフランシスコの暖かい太陽の下で、笑顔でいることだろう。

 私もトーニャも、オリバー爺さんのいない日々は寂しいけれど、そう思うことにした。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/