スペインでは1970年代から電力会社の統廃合を進め主な発電事業者を3社とし、対する送電会社は集中的に送電管理が行えるようREE社1社とする体制がとられている。

 本格的に再エネの導入を始めたのは97年頃からで、電力市場の自由化のための法制度を整備し再エネ事業者の参入を促すとともに、02年には発電事業者が持つ送電線をREE社に売却するよう指示。これにより、REE社はスペイン国内唯一の送電会社として国内全域の送電網を管理する体制に移行している。

 さらに、REE社は06年6月にマドリード北部近郊に「再生可能エネルギー監視制御センター」という管理組織を設立した。

 再エネはお天気まかせ、風まかせであるため電力が安定しないという弱点がある。これを克服するべく、REE社の再生可能エネルギー監視制御センターでは風力を主として、太陽光、水力などスペイン全土の再エネと天然ガスコジェネレーション発電の監視・制御を行っている。

 再生可能エネルギー監視制御センターは、中堅・大手の発電事業者などが再エネの発電状況を把握するためにスペイン全土におよそ30カ所設置した「再エネ発電コントロールセンター」とリンクされている。

 そして、再エネ発電コントロールセンターはスペイン全土の風力発電所やメガソーラー発電所の発電電力量や運用パラメーター情報を12秒ごとに吸い上げ、再生可能エネルギー監視制御センターに伝える。

 情報を受け取った再生可能エネルギー監視制御センターは各発電所の情報を集約し、最適な発電を行うための制御指令を決定、それを再エネ発電コントロールセンターに指令する。

 制御指令を受け取った再エネ発電コントロールセンターはその指令を15分以内に実施すべく各再エネ発電所をコントロールするという仕組みになっている。

 特徴的なのは再生可能エネルギー監視制御センターでは気象予測システムを活用しながら制御指令を決定しているという点だ。気象予測システムについてごく簡単に説明すると、天気予報などの気象予測データーを見ながら翌日に風力、太陽光など再エネでどのくらい発電できるかを計算するものだ。発電量が多ければ天然ガス火力の発電を抑え、少なければ天然ガス火力の発電量を増やすといったコントロールを再エネ発電コントロールセンターと、発電全体を管理する「電力中央給電指令所」にリンクされている在来発電コントロールセンターを通して行う。これによって、風まかせ、天気まかせといった気象条件に左右される弱点を克服しているのだ。気象予測も取り入れながらの制御とは注目に値する。

送電部門のREE社を介して、風まかせ、天気まかせといった気象条件に左右される再エネの弱点を克服している(画像クリックで拡大)

 このように、スペインでは発送電分離などの電力システム体制を改革するとともに、IT技術、気象予測技術を駆使して再エネの弱点を克服し、その普及とエネルギー多元化に成功しているのだ。

 もちろん、再エネの普及を果たしたスペインにも課題はある。太陽光発電を過度に優遇したFIT制度(再エネの固定価格買取制度)のアンバランスによる赤字増大のため昨年1月末にはFITへの新規申請を凍結。

 アンバランスを解消するため本年1月にはFITによる買取価格の削減も行われている。

 しかし、こうした課題はスペインが果敢に試行錯誤をした結果得られた経験であり、当然課題の解決に向けた取り組みも検討されている。

 実際、昨年12月には、スペインの企業数社が政府の補助金無しにメガソーラー事業を立ち上げる計画がブルームバーグなどから報道されている。報道によれば、企業は太陽光発電の発電コストが急激に下がっている現状からして政府の補助金無しでも十分に事業化できると見込んでおり、これが実現されれば欧州初の補助金無しで運営されるメガソーラープロジェクトとなるとの事だ。

 筆者が本年6月にスペイン大使館の関係者にこの点を伺ったところ、FITが凍結された現在でもスペインでは再エネ発電のプロジェクトが計画されてきており、補助金無しで事業化を考えている企業が確かに出てきているとの事だ。

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