File6 海の無人探査ロボット開発者 石橋正二郎

第3回 エンジニアは被告席に座らなければならない

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 ゆめいるか・じんべい・おとひめは、ほぼ同時期に、約1年から1年半の時間をかけて開発されている。ひとつをつくるだけでも相当な量の思考と作業が必要で、3つ並行でとなると、プレッシャーもかなりあったに違いないのだが、今の石橋さんからは「そんな苦労話より、できあがったAUVを見て! この部分を説明させて!」とでもいうような意志が感じられる。

使う側に注目される技術開発を

 石橋さんがそのプロジェクトを通してわかったことはもうひとつあった。青木さんは、針の筵に座らされた若手を、全力で守ってくれる上司だったということだ。

「私は、周囲の人たちに恵まれてここまで来たんです。それも、本当の意味で大人な人たちに恵まれて」
 その後、青木さんに代わって上司となった吉田弘さんにも鍛えられたという。

 吉田さん。阪口秀さん(JAMSTEC研究者。本連載File3で紹介)からお名前を伺っています。

「レーザー光でプレートの変動を検知する、という話ですよね。もともと吉田は、海中での距離を測定するのに使おうとしていたんです。秀さんにそうやって注目されたと聞いて、驚きました。でも、これが、ベストな技術研究のあり方だと思います。研究者から、そんなものがあるなら使ってみたいなと思ってもらえるものをつくるのが」

 オリジナルのAUVも、そこに載せた慣性航法装置も、電気式のマニピュレータも、石橋さんの、カッコよくてほかにない、日本製のものを、というこだわりから生まれたものだ。
 そして、それを便利だと思ってもらい、使ってもらう。

 この時点で、石橋さんは「被告席に座る」のだという。そして判決を待つ。
「『すごくいいね』なのか『石橋の作ったアレ、全然使えないな』なのか。でもこの判決は絶対に受けないとならない。私たちは、趣味でものをつくっているのではないので。そしてその経験をまだ傍聴席にいる次の世代に伝えていかなければならない」