第4回 イトカワにはなぜクレーターがほぼないのか

「重力の観測で、イトカワの質量と密度がわかります。一方、X線分光計の観測で、表面の岩石の種類が分かるわけですけど、こういうガレキが寄せ集まった状態ですと、表面と中身がまるっきり違う物質でできているということは考えにくいわけです。その岩石自体の密度は分かるので、イトカワの中身にどれくらい隙間、空隙があるかも分かってきます。結論としては、大体4割ぐらいが空隙だと」

 空隙率4割というのはかなりスカスカな印象だ。だから、岡田さんは、イトカワを「軽い」と表現した。

 そして、空隙がどれほどかというのは、太陽系の天体がどんな過程で大きくなってきたのか、というのを直接、教えてくれる指標と考えられている。ある程度、大きな塊がぶつかりあっても壊れずにくっつきあって、必然的に空隙も多い「ガレキの寄せ集め」(ラブルパイル)になったのがイトカワであり、そのようなことが実際に起きた証拠になっているわけだ。

 なお、スカスカであるイトカワの中に、まとまって大きな空洞があるのか、小さな空隙がたくさんあるのか、気になる(大きな空洞があるなら、宇宙基地に使えないか、とか。そういうSFがあった気がする)。しかし、そこまでは分からないそうだ。

 とはいえ、今は現実にイトカワから持ち帰ったサンプルが少量ながらあり、顕微鏡でその結晶構造などを見て話ができるので、その方面から見た話を次回、掘り下げて聞こう。

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つづく

岡田達明(おかだ たつあき)

1968年生まれ。独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系兼月惑星探査プログラムグループ 理学研究グループ准教授。理学博士。専門は惑星物理学、惑星探査科学。主な研究テーマは太陽系の惑星、衛星、小惑星の形成や進化。「はやぶさ」「かぐや」「はやぶさ2」等に搭載する光やX線観測機器の開発に携わり、将来の月惑星探査の検討や機器開発も進めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider