「町中でケバブを見つけたら、食事をした後でもつい食べてしまいます。イスタンブールなんかは気軽に食べられるケバブ屋が多いから大変です(笑)」とエロールさん。「そうそう、匂いに引き寄せられてお店に入ってしまうんですよ」とヌルラフさんもうなずく。

 意外だったのがヨーグルトだ。酸味がほどよくまろやかで、ケバブをマイルドな味わいに変える。「トルコはヨーグルト発祥の地と言われていて、ケバブと同じくらいみんなヨーグルトが好き。毎日食べるんですよ」とエロールさんが教えてくれた。約7000年前に東地中海から中央アジアにかけて遊牧民が食べ始めたのが起源だといわれていて、名前はトルコ語の「yogurt(ヨーウルト)」からきているとか。

 「トルコではヨーグルトを家で作ることが多く、いろいろな家庭料理にも使われているんです」といってヌルラフさんが教えてくれたのはマントゥという料理。肉と野菜を皮で包んで茹でた料理で、ヨーグルトを使ったソースをかけて食べるのが一般的だという。

 「マントゥを食べる時は、母親を中心に家の女性たちが集まって作るんです。小さい頃はそれを見ているのが楽しみでした。少し大きくなると一緒に作ったりしてね」とエロールさん。

 ヌルラフさんも「妻の一番の得意料理なんです。トルコの女性は結婚する前に、母親の料理をすべて受け継ぎます。代々受け継がれてきた妻のマントゥも私にとってはソウルフードですね」と微笑む。

 トルコはシルクロードの中継点。ケバブは中近東でよく食べられているし、マントゥも中国の饅頭(マントウ)や包子(パオズ・点心の一種)がシルクロードによって伝わったものだとも言われている。長い歴史の中でさまざまな食文化が折り重なってきた奥深さこそが、トルコ料理が世界三大料理のひとつに数えられる所以なのだろう。

イスケンデル・ケバブ。細かく切って軽く焼いたたピタ(丸くて平らなパン)の上にドネル・ケバブをのせてトマトソースとヨーグルトをかける。最後に溶かしたバターをかけてコクを出すのもポイント
マントゥの皮は厚めでもちもちとしていて具は少なめ。饅頭というよりワンタンに近い。エロールさんが作るマントゥは牛骨でダシを取ったスープで煮て、ヨーグルトをかけて食べる

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中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮

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