イマームのヌルラフ・アヤズさん(写真右)とアンカラオーナーシェフのエロール・イペックさん。偶然にも2人とも首都・アンカラの北東約200kmのところにある都市・カスタモヌの出身

 エーゲ海沿岸の都市・イズミルでは肉を竹串に刺して焼くチョプ・ケバブ(チョプ・シシとも)、中南部にあるアダナでは挽き肉を使ったアダナ・ケバブが名物など、地域性も豊かなのだそうだ。「子どもからお年寄りまで、ケバブが嫌いなトルコ人はいない」とヌルラフさん。トルコの前身でありトルコ料理の発展をもたらしたオスマントルコ帝国は遊牧民族が起源だというから、彼らが肉好きなのもうなずける。

 話を伺っているうちに、香ばしい匂いが店内を漂いはじめた。アンカラのオーナーシェフのエロール・イペックさんがドネル・ケバブを焼いているのだ。肉が焼ける音と脂がしたたる様子がなんとも食欲を刺激する。

 「ケバブの肉は羊と牛が多く、鶏もあります。いま焼いているのは牛肉。大きな肉片に見えるけれど、これはスライス肉を固めたものです。厚さ2ミリにスライスしたステーキ肉におろしタマネギと香辛料、ヨーグルトなどで下味をつけ、固めて寝かせてからじっくりと焼くんです」と、エロールさん。なかなか手が込んでいるが、どのような時に食べるのだろうか。ヌルラフさんに尋ねた。

 「お祝いの時などによく食べますね。ドネル・ケバブのグリルは家にありませんし、肉の味付けも手間がかかるのでお店で食べることが多いんですが、小さい頃は行事というとケバブが食べられることが嬉しかった。特別感があるんです。いまは故郷に帰ると両親や友人たちと家の庭でシシ・ケバブバーベキューをしたりしています」

 そこへお待ちかねのケバブがやってきた。ヌルラフさんが特に好きだというイスケンデル・ケバブだ。パンの上にドネル・ケバブをのせてトマトソースとヨーグルトをかけたもので、さっそく一口いただく。肉はふわりと軟らかく、肉汁がたちまちに広がる。脂を下に落とすように焼くからしつこくなく、強めの香辛料がピリッと後を引いて、フォークを持つ手が止まらない。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る