第2回 宇宙と「地形」への興味から「はやぶさ」の研究へ

「地球大紀行」は、日本のテレビの科学番組史に残る大作で、今でもDVDや関連書籍が手に入るほどだ。岡田さんは、「コスモス」『ニュートン』「地球大紀行」と、ある意味、当時の科学啓蒙メディアの王道に接しつつ惑星科学へとどんどん引き寄せられていったことになる。惑星科学を世界に発信したカール・セーガンにしても、『ニュートン』を創刊したスタッフにしても、まさに仕掛けがぴたっとはまった快心の人材だったかもしれない。

 岡田さんは大学3年生で志望学科を決める段階で、地球物理学科を選んだ。

「実は、私が大学院に進んだちょっと後ぐらいから、大学の学科の名前が『地球物理学』から『地球惑星何とか』に変わるところが増えました。その方が学生に人気があったというのもあるんですが(笑)。でも、私としては、地球というのは、他の惑星と置きかえても変わらない、単に太陽系の内側から3番目の惑星だと、そういう感覚でしたので、特に違和感はなかったんです」

 そして大学院生の時に、宇宙機に搭載するX線分光計の研究開発を始め、これが「はやぶさ」に搭載された。日本の宇宙探査史上、最も一般社会に浸透する「ドラマ」の一翼を担うことになった。

「私が声をかけてもらった時には、小惑星探査ミッションとして1997年ぐらいの打ち上げを目指していました。私が大学院に入ったのは91年ですので学位取得には間に合わないんですけど、そのまま研究を続けるとなると、それは結構面白いなと始めたんです。実際は聞くたびに打ち上げは遅れてゆく一方で、打ち上がったのは2003年です」

 これが結果的には素晴らしいタイミングだったようなのである。観測機器の開発で学位をとり、さらには開発・搭載・運用・観測の成功・サンプルリターンの成功、そして、あれやこれやのドラマチックなイベント、それらの全てを体験できたのだから。

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つづく

岡田達明(おかだ たつあき)

1968年生まれ。独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系兼月惑星探査プログラムグループ 理学研究グループ准教授。理学博士。専門は惑星物理学、惑星探査科学。主な研究テーマは太陽系の惑星、衛星、小惑星の形成や進化。「はやぶさ」「かぐや」「はやぶさ2」等に搭載する光やX線観測機器の開発に携わり、将来の月惑星探査の検討や機器開発も進めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider