第48話 心臓破り坂の悪魔のささやき

 上り坂で橇を降りて、犬たちと走ることにした私は、さっきまでの凍りつくような寒さとは反対に、今度は、猛烈な暑さに襲われた。

 まるで、だるまのように着込んでいるので、発散している体の熱が服の中でこもって、歩くサウナ状態なのである。

 しんどくて、しんどくて、

 橇を投げ出したいという思いに加え、着ているものすべてを、脱ぎ捨てたいという思いに駆られた。

「もう、裸でもいい。この暑さと、服の重さから解放されたい」

 私は、頭から湯気が上がるくらいに、蒸しあがって、意識がもうろうとしはじめた。

「あ……、もう走れない」

 橇を手放す訳にも行かず、私は再びステップに足を乗せた。

 すると、ずしりと橇が重くなり、犬たちの肩に負担がかかったのが分かった。

「あ…、申し訳ない……」

 そう思いながらも、息を整えるのに必死で、再び橇を降りることができなかった。

 犬たちが、前かがみで、足を踏ん張って私が乗る橇を引いている。

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