第17回 黒海

 古の海路をたどる「海のシルクロード」に続いて、今回も歴史に思いを馳せる船旅を紹介しましょう。ヨーロッパとアジアに挟まれた黒海です。ここは、激動の歴史の渦中に置かれてきた場所であり、一方で陸からアクセスしにくい旅先として客船クルーズが人気を集めています。トルコのイスタンブールを基点に、ブルガリアやウクライナ、ロシアなどの黒海沿岸リゾートや古都を巡る1週間ほどのコースがおすすめとなっています。

黒海沿岸のヤルタは、年間の平均気温が15度ほどという温暖な気候で、沿岸屈指の保養地となっている。
写真:島津奈美(写真クリックで拡大)

 船でイスタンブールからボスポラス海峡を東へ抜けると、徐々に海水が黒味を帯びてきます。そこに広がるのは、英語名でずばり「Black Sea」。黒海は総面積およそ44万平方キロ、世界最大の湖であるカスピ海と同等の面積があります。

 ヨーロッパとアジアが交わる黒海沿岸は、大国による争奪戦が幾度も繰り返された歴史を歩んできました。この沿岸では趣の異なる都市が続いていますが、いずれも歴史の断面をしのぶことができます。

 たとえば、2014年の冬季オリンピックが開かれるソチは、スターリンが別荘を構えたところとして有名です。ロシア帝国の貴族が避暑地として愛したヤルタでは、40メートルもの断崖の上に城塞が建つ通称「ツバメの巣」や第二次世界大戦での「ヤルタ会談」の舞台となったリヴァディア宮殿が見所です。

 ネセバルやオデッサは、2000年前のトラキア人に始まり、ギリシャ、ローマ、オスマン、ロシアと帝国支配が変遷した場所です。なかでもオデッサは、「黒海の真珠」と呼ばれる街並みが美しい、ウクライナの沿岸都市。全142メートルというポチョムキンの階段が名所となっています。

 これらの場所は現在、いずれも古都散策とビーチリゾートを同時に楽しめる保養地として人気を集めています。特に温暖で天候も安定する5~6月の初夏や9~10月の初秋は、数多くの客船が黒海を航海する光景を目にします。

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