第1回 世界のエネルギー開発競争に乗り遅れる日本

日本はどこへ向かうのか?

 こうした世界のエネルギー潮流の中、2013年6月14日に日本の行く末を占うものとして「日本再興戦略」、いわゆる成長戦略が政府から公表された。

 日本再興戦略の内容には、エネルギーの高効率化を図ること、再生可能エネルギーの導入を促進することなど、およそ各国が取り組んでいるのと同じような内容が盛込まれている。

 しかし、こうした内容は「日本再興戦略」以前の政策文書にも度々記載されてきたもので新しさは感じられない。

 問題なのは、これまで同じような政策内容が唱えられてきたにもかかわらずなぜ現在にいたるまで実現できていないかという点だ。

 この点を前述した各国と比較して考えると、まず、日本は福島原発事故という世界的に見ても未曾有の事故を経験したにもかかわらず今後何を優先してエネルギー政策を考えるのかという“肝心な部分”が見えてこないという問題がある。

 安全性なのか、経済性なのか、環境負荷軽減なのか、はたまた安全保障なのか? もちろんどれか1つを選ぶことはできないが、少なくとも日本として優先すべき事項は何なのかを示さなければ誰も政策の方向性が見えず議論が空回りするだけだ。

 エネルギー戦略を迅速に打ち立てている国はその決定プロセスにこそ違いはあるにしろ目指すべき方向をしっかりと見据えているといえる。

 方向性が見えて初めてそれを実現するために必要なエネルギー構成、制度設計、規制緩和、技術開発といった具体的な政策課題を挙げることができる。

 そして、それらの政策課題にどのような時間軸で取り組んでいくかというロードマップと数値目標も描けるはずだ。

 7月21日には参議院選挙が行われるが、エネルギー政策は好むと好まざるとにかかわらず選挙の争点の1つと目されるであろう。であれば各党、各候補者は“肝心な部分”を示すべきで、これを曖昧にしたままエネルギー政策の審判を受けることはできない。

つづく

平沼光(ひらぬま ひかる)

1966年、東京都生まれ。東京財団研究員・政策プロデューサー。1990年、明治大学経営学部卒業後、日産自動車株式会社を経て、2000年、東京財団に入団。政策研究部で外交・安全保障、資源エネルギー分野のプロジェクトを担当。内閣府 日本学術会議 東日本大震災復興支援委員会 エネルギー供給問題検討分科会の委員も務める。JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の地球深部探査船「ちきゅう」による世界初のメタンハイドレート海洋産出試験に際し、Webナショジオでは「世界初の快挙なるか! メタンハイドレート海洋産出試験」を連載。『日本は世界1位の金属資源大国』 (講談社+α新書)『日本は世界一の環境エネルギー大国』(講談社+α新書)『原発とレアアース』(共著、日本経済新聞出版社)などの著書がある。