第3回 美食の国の母なる味

テリーヌをクルトンに塗るとまた違う食感が楽しめる。フランスには豚肉をラードで煮詰めてペースト状にした「リエット」という郷土食もあり、テリーヌと混同されるが違うものである

 「テリーヌとはもともと長方形をした容器の名前で、これを使って作る料理は全部テリーヌと呼ばれています。テリーヌ・ド・カンパーニュは、豚肉と鶏のレバーを塩とハーブ、白ワインに一日漬けてミンチにし、すりつぶしたエシャロットやニンニクを混ぜます。さらにピスタチオを入れて容器に詰め、低温でじっくり2時間ほど蒸し焼きにすれば完成。1日ほど置くと味がなじんでより美味しくなりますよ」

 世界三大料理のひとつと言われるフランス料理だが、ソースや香辛料を使い見た目にも美しいスタイルは16世紀にイタリアから入ってきたもの。それまではパンや果物はほとんど食べず、肉が多かったという。肉をすり身にしてパイ生地で包む「肉のパテ」は当時からよく食べられていて、そのすり身を容器に入れて焼くテリーヌはパテの派生物であり、保存食の意味もあるのだという。

 「作り置きができるのも便利。昔の人の生活の知恵でしょう。ピスタチオの代わりにレーズンをいれるなど、材料や味付けは家庭によって違いますが、フランスパンとワイン、そして前菜にテリーヌ・ド・カンパーニュというのが、フランスのオーソドックスな食卓のひとつです」

 とはいえ、けっこう手間のかかる料理ではないか。これを日常的に家庭で作っているのかと思いきや、最近は手作りする家庭が少なくなっているそうで、代わりに本国ではテリーヌの専門店が増えているという。

 「お店のものはうずらやうさぎ、魚を使ったり、野菜だけで作ったりと種類も豊富で、見た目もきれい。でも、ふと食べたくなるのはやっぱりテリーヌ・ド・カンパーニュです。祖母から母へ、母から子どもへと代々受け継がれてきたDNAのようなものがあるのかもしれませんね」

やはり食事には欠かせないフランスパン。料理が出てくるまでパンを食べながら待つのだという。外はパリパリ、中はもっちりとしているが、口に入れるとびっくりするほどフワフワと軽いのが本場の味。気温や湿度を考えて焼き加減を調節するのだとか