第16回 海のシルクロード

 船旅は期間的に1週間から10日間くらいがお手軽ですが、なかには1カ月から3カ月と長い期間を旅行する航路もあります。「世界一周」と銘打った3カ月の旅行はこの典型例でしょう。そこまでの長期でなくても、1カ月程度を費やす楽しみ方もあります。今回紹介する「海のシルクロード」がその1つ。中国からインド洋の各都市に寄港し、地中海に抜けるこの船旅はまさに古の海路をたどるクルーズと言っていいでしょう。

海のシルクロードの航路に当たるアラビア半島のドバイクリークで、ダウ船が行き交っている風景。
写真:菅原千代志(写真クリックで拡大)

 海のシルクロードの存在は、紀元前にさかのぼると言われます。中国、インド、西アジアの中緯度湿地帯、そしてエジプトを中心に発達した大文化圏を相互に結ぶ、海上の交易路のことです。一般的に知られる“陸”のシルクロードが、諸国間の争いでしばしば中断を余儀なくされたのに対し、16世紀に喜望峰を廻る世界一周航路が発見されるまで、“海”の航路は隆盛を極めたとされています。

 この歴史的な航路は現在、客船による世界一周クルーズの一部として旅することができます。日本の横浜や中国の上海あるいは香港を出発し、シンガポールなどを巡り、マラッカ海峡を抜けてインド洋へ。スリランカのコロンボやインドのコーチを点々と寄港してアラビア半島、そしてスエズ運河を抜けて地中海に向かう、大航海クルーズで、所要日数はおよそ30日です。

 かつて、中国から陶磁器や絹、東南アジアやインドから香辛料を西方へ運んだこのルートを追うと、確かに各港町はそうした品々が豊富です。マラッカ海峡やインド沿岸都市には、西洋の列強が残したコロニアルな建物が数多く現存します。ドバイなどのアラビア半島の港町は、世界各地からの品々が集積した市場や港が実に盛況です。「海のシルクロード」は、現代にも引き継がれていると言えます。

 このルートは熱帯モンスーン気候に属するエリアのため、旅行する場合は降雨の少ない11~4月が最適です。利用する船は、日本や外国の客船が1年以上前に発表する世界一周のルートに着目しましょう。世界一周ルートでは、一部区間のみを乗船できるケースも多く、具体的には東アジアから地中海に行く区間をチェックするといいでしょう。

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