第52回 カマキリモドキはカマキリの真似をしていない?

カマキリモドキの一種 (アミメカゲロウ目:カマキリモドキ科)
A species of mantisfly
体長:約15 mm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 皆さんは、カマキリモドキという昆虫をご存知でしょうか?

 世界的にまだ400種類ほどにしか名前が付いておらず、まだまだ研究が進んでいないグループで、名前の通り、カマキリに似ている。三角の頭をもち、鎌(カマ)のような前脚で小さな昆虫を捕らえ、ムシャムシャと食べる。花の蜜も飲むそうだ。

 けれどカマキリにそっくり!というほどでもないのがこの昆虫の微妙なところ。英名ではMantisflies=カマキリバエで、飛ぶ様子はハエのようにすばしっこい。それにカマキリモドキのグループの中には、アシナガバチやスズメバチに似た模様をもつものや、クサカゲロウのように見えるものもいる。カマキリの真似をしているわけではないようだ。

 このカマキリモドキ。カマキリとは全く違う、アミメカゲロウのグループに属している。コスタリカでは、夜に灯火採集のライトに来ているところを見かけるのがほとんどで、それ以外であまり見かけない。

 面白いのは幼虫の生活だ。カマキリモドキの幼虫のほとんどは、クモの卵の汁を吸って成長する。いわば、クモの天敵である。ある種は、クモのメスにしがみついて、メスが卵を産むのを待っているという。待っている間、メスの「生き血」を吸っているそうだ。成長した幼虫は、クモの卵の袋(卵嚢)の中で、繭をつくって、蛹になる。
 今回はコスタリカで撮影したカマキリモドキの写真をご覧ください。

カマキリモドキ、2種 (アミメカゲロウ目:カマキリモドキ科)
Mantisflies
昼間に出会ったカマキリモドキたち。左は、赤茶色と黄色の縞模様をもち、アシナガバチの一種に擬態しているようだ。右はクサカゲロウの一種に見える。同じ場所で、これにそっくりなクサカゲロウを見つけている。
体長:左)約25 mm, 右)15 mm 撮影地:左)エル・ロデオ保全区域、右)サン・ホセ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
カマキリモドキの一種 (アミメカゲロウ目:カマキリモドキ科)
A species of mantisfly
灯火採集の白いシーツの上に来て、「鎌の腕」を広げたり、スロージャブのパンチを繰り出したりしていた。求愛のときは、オスとメスが向き合って「鎌の腕」を動かすそうだ。
体長:約20 mm:撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
カマキリモドキ、2種 (アミメカゲロウ目:カマキリモドキ科)
Mantisflies
左は鎌を口で手入れしているカマキリモドキ。右は別種。写真は拡大すると、LEDライトを集めたような複眼の模様が確認できる。
体長:それぞれ約20 mm 撮影地:左)リンコン・デ・ラ・ビエハ、右)サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
カマキリの一種 (カマキリ目:カマキリ科)
A praying mantis
「カマキリそっくり!」ではなく、これは、ホンモノのカマキリ。形や大きさがカマキリモドキに似ている。カマキリモドキを見て、カマキリもドキッ!という感じだろうか。。。
体長:約25 mm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html