「この緑の種子はカルダモンといいます。甘く優雅な香りから“スパイスの女王”とも呼ばれていますが、脳を活性化させる働きがあるんですよ。脳の血流をよくするので集中力がアップするんです」
「そうなのか!」と感心しながら、カルダモンの匂いをよく嗅いでみる。甘さもさることながら、すーっと鼻から抜けるようなさわやかさがあり確かに脳がすっきりするようだ。インドの国民的飲料「チャイ(インドのミルクティー)」にもカルダモンを入れたりするそうで、インド人が暗算を得意としているのもなんだか妙に納得する。
そのカルダモンとともにライスに入っていたのがクミン。お腹にガスがたまるのを防いで胃腸の働きを正常にするうえ、余分なものを排出するデトックス効果もあるという。麦のような姿形から発する匂いはいわゆる「カレー」。炒め物や煮物など多くの料理に使われるもっともポピュラーなスパイスのひとつだというから、この匂いが我々にインド料理=カレーという図式を作り上げたのかもしれない。
試しにクミンを食べてみる。一粒でたちまち口の中が“カレー臭”でいっぱいになるが、ほのかに青臭いだけで味はしない。カルダモンも同様に味はそれほど感じない。もっと辛かったりしびれたりするのかと思っていたので少々拍子抜けする。目の前にあるダールにもクミンが入っているというが、この汗が吹き出る辛みは何なのか。
「この辛さは唐辛子ですよ。でも実は唐辛子は大航海時代にポルトガル人が持ってきたもので、インドでは比較的新しいスパイスなんです。それ以前から辛みに使われているのはブラックペッパー。数千年前からあります」
辛みのスパイスの試食は遠慮いたしました、はい。