前回、豆を煮込んだ「ダール」という料理がインド人にとってのソウルフードという話をご紹介した。これまでインド人は3食カレーを食べるとばかり思っていたが、どうやらそれは日本人のイメージにすぎないようだ。カレーと一言でいってもインドでは使う調味料や調理法も違うし、名前だってそれぞれある。話をうかがってみると、何やら奥深すぎるインド料理事情が浮かび上がってきたのだ。

 「スパイスはサプリメントなんです」

 東京・西葛西のインド料理店「スパイスマジック カルカッタ 本店」でダールをほおばっている最中、オーナーのジャグモハン・S・チャンドラニさんが意外なことを教えてくれた。

 そういえば、インド料理店から漂ってくるスパイシーな匂いに誘われて店に入ったことが何度もあったっけ。この鼻腔をぴりっとくすぐる匂いが食欲を刺激するんだよなあ、とダールとにらめっこしていると、チャンドラニさんは続ける。

「スパイスは風味を出すためのものだと思われがちですが、一番重要なのは薬効なんです。インドの家庭では食材、味だけではなく、その日の体調や気候に合わせてスパイスの種類、分量を決めて料理を作ります。サプリメントのようなものですね」

 たとえば……といって出してくれたのがお椀型にもられたライス。ほんのりと甘い匂いが漂う。どうやらライスに入っているピスタチオのような緑色の物体が、その甘さの元のようだ。

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