第4回 宇宙医学が貢献するアンチエイジング

筋肉量は寝たきりの人の2倍の速さで減る

 宇宙では1日約1%も筋肉量が減る。これは地上で寝たきりの人の約2倍の速さ。このダメージを少しでも減らすべく、宇宙飛行士に最適な運動プログラムを開発しているのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙医学生物学研究室長の大島博さんだ。
「筋肉量の減少を抑えるために、国際宇宙ステーション(ISS)では、毎日2時間、週に6日間、有酸素運動と筋肉運動を行っています。注意点は筋トレを行う際の筋肉の損傷を防ぎ、筋肉の回復力を高めることです」

 このところ加齢によって筋肉量と筋力が低下する「サルコペニア」が話題になっている。これが高齢者の転倒や骨折を引き起こし、寝たきりになってしまうケースが多い。宇宙飛行士の筋肉量低下が似たケースとして、加齢性サルコペニアなどの有効な予防法が見つかるかもしれない。

向井さんが語る宇宙医学とは

ナショジオの表紙を飾ったジョン・グレン。1998年10月、36年ぶりとなる宇宙飛行を77歳で成功させた。この時、向井さんも一緒にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗している

 宇宙飛行士でJAXA宇宙医学研究センター長の向井千秋さんは「宇宙船に乗るには難しい訓練が必要だと思われていますが、77歳のジョン・グレン氏が10日間程度滞在したという記録を見ても、普通の健康状態の人が宇宙へ行くことは充分に可能です。私ももう一度宇宙に行く夢を持ち続けていますよ」と話す。

 さらに向井さんは、人工的に重力を制御する研究にも関心を示す。例えば、地上で重力の低い状態を人工的に作り出すことができれば、病気の治療やリハビリなどに応用できると言う。