第15回 ときにはカッコ悪い旅 パタゴニア追想記 その(3)

 杖をついた長靴姿の非常に不愛想な老船長とそのいささか若すぎる奥さん(この人はにこやか)、3歳ぐらいになるその娘。そしていつも悲しげな顔をした航海長のような中年の船乗りがいた。乗員はそれしか紹介されなかった。そのくらいの帆船になると少なくともあと5人は専属の船乗りがいないと動かせない、とシロウト目のぼくもわかる。姿が見えないのは、それらの船員は停泊中の今、陸にあがってなにか楽しいことをしているのだろう。そいつらはまもなくやってくるのだろう。そうしたら出発だ。

 と、ぼくはノーテンキに考えていた。6人ぐらいは寝られる甲板下のベッドがある。ぼくのチームは5人。タタミ1畳ほどの押し入れのようなスペース(列車のA寝台の感じ)だが1人1部屋づつ与えられとにかく満足し、航海への期待はふくらんだ。

 ところが船はなかなか発進しない。「出航はその日の遅い午後」と無愛想な船長は言ったのだが午後はどんどんすぎていく。

 ひととおり寝床の支度をして甲板にあがっていくと何やら騒がしい。停泊している帆船に一番近い丘の上に男たちが5人ほどいて、彼らがなにかしきりにさわいでいた。スペイン語のしかもそうとう下劣な言葉ばかりだ、と通訳が教えてくれた。

 おまけに数人で船めがけて石など投げてくる。規模は小さいがどうやらこれは本気の襲撃だ。なんだなんだ。