彼らがいた頃のアジアを思い描くとよい。人類の仲間、それもホモ属と呼ばれるきわめて我々に近い存在が何種類もいた。

 まずは、いわゆる新人、ホモ・サピエンスである。つまり、ぼくたち自身の種。さらに、デニソワ人や「中国の旧人」といった、ヨーロッパのネアンデルタール人に相当する旧人たち。さらにさらに、5万年くらい前までは最後期のジャワ原人が生き残っていたし、フローレス島には人類進化の柔軟性と多様性の象徴、フローレス原人! 様々な種類の旧人、原人が数万年前まで共存していたわけだ。地球上をべったりとホモ・サピエンスが覆い尽くした現在とはまるで様相を異にしている。

 そして、今後も「未知の人類」の発見がアジアでも期待できると、海部さんは言う。

「考えてみたら空白地帯というのはたくさんあるんですよ。東南アジアでも、例えばベトナムで奇妙な人類の歯が出てますけど、よくわからない。タイだとかマレーシアとかは、全く空白地域です。いや、もう、空白だらけなんです。インドだって事実上そうだし、パキスタンもバングラデシュも何も出てないし、日本だって旧人や原人は見つかっていない。そこから次に何が出てくるんだろうっていうのが非常に楽しみになってきています」

約1万5000年前のマンモスの骨を利用した住居を復元した展示。マンモスの骨の家は3万~1万年前に、主にウクライナを中心とする東ヨーロッパの寒い地域でつくられたという。これはメジリチ遺跡のもので、400にものぼる骨が使われていた。(写真クリックで拡大)

つづく

海部陽介(かいふ ようすけ)

1969年、東京都生まれ。独立行政法人国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ・研究主幹。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 進化多様性生物学大講座・准教授。理学博士。1992年、東京大学理学部生物学科(人類学専攻)を卒業。95年、同大学院理学系研究科博士課程を中退し、国立科学博物館人類研究部研究員となる。2007年、東大准教授を併任、現在に至る。「アジアにおける人類の進化・拡散史の研究」で12年度の日本学術振興会賞を受賞。『人類がたどってきた道―“文化の多様化”の起源を探る』(NHKブックス)の著書、『人類大移動 アフリカからイースター島へ』(朝日選書)の共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider

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