病気のホモ・サピエンスだという説にはさまざまな批判が投げかけられ、さすがに今ではほとんど支持されなくなった。残るのは、ジャワ原人が劇的に矮小化したのか、元々小さい最初期の原人ホモ・ハビリスなどがやや矮小化したのか、その2つの立場が今対立をしているのだという。

「実は多くの研究者は、アフリカのホモ・ハビリス説に流れてるので、僕らはある意味、孤軍奮闘なんです。だけど、大きな問題点は、ホモ・ハビリス級の古い人類がアジアに進出している証拠がこれまでにないことなんですよ。もちろん、単に今その証拠がないだけでいずれ見つかるだろうと考えることもできます。でも僕らは僕らの根拠があって、やっぱりジャワ原人に一番よく似ているってことですよね。僕らにしてみると、アフリカの人類をこれまで見てきて、ジャワ原人をあまり知らない人が、ハビリス説を支持しているように思えるんですね」

 とりわけ脳サイズが極端に小さくなることは「あり得ない」とされるので、海部さんらは、この4月の論文では、3つの論点から「実はそれほど極端な矮小化ではない」と示した。

 1つ目は、もちろん脳サイズの厳密な測定だ。

「頭骨の高精度CTスキャンデータから3Dプリンタでレプリカを作って、それを切ってみて、内腔のダメージの様子を見たんです。実物だと切って中を見るわけにはいかないので。そして、ダメージのあるところに粘土を張りつけて復元して、脳サイズは426cc、誤差はせいぜいプラスマイナス3ccだとまでつきとめました。これまで380ccから430ccの間とされていた推定の幅の中では、大きめの脳サイズだと分かったわけです。これはたいへん骨の折れる仕事でしたが、筆頭著者で東大の特任研究員の久保大輔君が、粘り強く成し遂げてくれました」

 2つめの議論は、フローレス原人の祖先となったと海部さんたちが考えているジャワ原人の脳サイズだ。

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