第2回 3Dプリンタでフローレス原人の脳サイズを測定

 一連の考察で、脳サイズの祖先値と子孫値のギャップが小さくなって、「体のサイズと脳サイズ」も従来考えられていたより強く連動すると示された。その「回帰直線」の延長上にフローレス原人のボディサイズと脳サイズがぴったりとのっかるわけではないのだが、これまでほど「あり得ない」ものではなくなった。

 海部さんたちは、頭骨の特徴から、フローレス原人は、ジャワ原人由来だと信じており、それは様々な地域・年代のジャワ原人を見続けてきた経験に裏打ちされている。似ている原人がすぐ隣にいたのだからそれを祖先と考えるのはごく自然な発想だ。論文を発表した直後から、研究者の間でも好意的なコメントが届いているそうだ。

「やはり脳サイズを確定したことが大きいですね。ただ、この論文だけで今までハビリスに傾いてた人たちがこっちになだれ込んでくるわけではないんです。皆さんこだわりが当然ありますので。だけど今までかなり傾いていたのを1回戻したと。この後重要なのは、フローレス島で発見が期待される新たな化石ですかね。100万年前の石器が、同じフローレス島の違う地域から出ているんです。そこで化石が出れば、祖先がどうだったかわかるでしょう。まあ多分、その時に『それ見ろ』と僕が言えるのか、あるいは『すいません、間違ってました』って言うのか、どっちかになるんでしょうね」

とにかく小さい!(写真クリックで拡大)

つづく

海部陽介(かいふ ようすけ)

1969年、東京都生まれ。独立行政法人国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ・研究主幹。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 進化多様性生物学大講座・准教授。理学博士。1992年、東京大学理学部生物学科(人類学専攻)を卒業。95年、同大学院理学系研究科博士課程を中退し、国立科学博物館人類研究部研究員となる。2007年、東大准教授を併任、現在に至る。「アジアにおける人類の進化・拡散史の研究」で12年度の日本学術振興会賞を受賞。『人類がたどってきた道―“文化の多様化”の起源を探る』(NHKブックス)の著書、『人類大移動 アフリカからイースター島へ』(朝日選書)の共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
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