第2回 3Dプリンタでフローレス原人の脳サイズを測定

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「頭骨が見つかっているのは1体だけで、発見された洞窟の名を取ってリャン・プア1号、LB1と呼ばれる標本です。とにかく、小さい! とまず感じました。両のてのひらに収まってしまう。ですが、ちゃんと歯が生えそろっていて、もう立派な大人ですから、いや、ほんとに小さいんだなと。それで、よく見ると原人の特徴が幾つもあるんですね。例えば、突顎と言いますが顔面が前に突き出ているとか、額が垂直に立たずに後方へ傾斜しているとか、弱いながらも眼窩の上縁の骨が肥厚する眼窩上隆起という構造もきちっとある。だから、やっぱり本当に古い人類なんだというのは、もう見てすぐ思いました」

 海部さんの所見では、低身長症など病気のホモ・サピエンスということは有り得ず、原始的な特徴と固有の特徴をあわせ持った、未知の人類には間違いなかった。そして実際に、詳しく調べてみたところ、ジャワ原人との関連を意識するようになる。 

「──記載論文を任されたので、誰よりも詳しく見る余裕があったんです。化石をインドネシアから日本に持ってきてもらって、東京大学で非常に高精度のCTをとって。そのデータと実物を何度も何度も見て、まだ土が残ってたりするのを自分でクリーニングしたり、一部強化したり、そういうことを繰り返しながらじっくりやっていきました。そして、地理的に近いジャワ原人と関係あるのではないかと思うようになりました。僕が一番ジャワを知っているからという自信からも来ているんですが、ホモ・サピエンスではありえないし、アフリカの他の人類よりも、インドネシアのものとよく似てる。だから劇的な矮小化がありえないっていうよりも、実際に起きたと考えなきゃいけないと」

「──ただ、ジャワ原人といっても100万年ぐらい年代幅があるんですね。新しいやつと古いやつと。それで、フローレス原人は、古いタイプのジャワ原人と似ているんです。新しいジャワ原人では、眼窩上隆起の中で端っこのほうが分厚くなったり、額の幅が広くなったり、大後頭孔(だいこうとうこう)と呼ぶ脊髄の通る穴がちょっと細長くなったりするんですね。ホモ・フロレシエンシスはそういう特徴を一切欠いていて、古いほうによく似ています。要するにジャワ原人が古い時代にフローレス島に入って、100万年ぐらいかけて独特の進化をとげたと、そういうシナリオと整合すると僕らは思ってるんです」