ジャグモハン・S・チャンドラニさんは、インド東部にあるコルカタ(カルカッタ)の出身

 見る限りではよくある日本の住宅街だった。インド料理屋が軒を連ね、カレーの匂いが立ち込めているのでは、と想像していただけに少々不安を覚えながら歩き出す。すると、スーパーマーケットの前でベビーカーを押す黄緑色のサリーを着た女性を発見。すっかり街に溶け込んでいるではないか。

 「西葛西にインド人が住むようになったのは1999年からです。コンピューターの誤作動が危惧された、いわゆる『2000年問題』の対策のために、IT国家として注目され始めていたインドの技術者たちが、日本企業に雇われて続々と来日したんです。彼らは会社員ですから、平日の昼間はあまり見かけないかもしれませんね」

 そう教えてくれたのは、西葛西でインド料理店を営むジャグモハン・S・チャンドラニさん。1979年からこの街に住むチャンドラニさんが、彼らの住居を世話するうちに、人が人を呼んでインド人が集まるようになったのだという。

 「今でこそファミリーも増えましたが、当時は単身で働きにきている人間ばかりでした。仕事が忙しい彼らは料理を作る暇もありません。でも、疲れた時ほど食べたいのが母国の味。私は紅茶などの輸入販売を本業にしていますが、彼らが日本にいても家庭料理を食べられるようにと店を始めたんです」

 店のメニューにはチキンや魚介、ほうれん草のカレーなどが並ぶ。家庭で食べる料理ばかりなら、この中にソウルフードがあるのではないか。そう尋ねるとチャンドラニさんはうなずいて、ひとつの料理を出してくれた。

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