第3回 景気だけでなく若さもUP?! アベノミクスが見据える再生医療

 そして今、iPS細胞を使った応用研究が色々な方面で進められている。とはいえ、実用化までには、まだ時間がかかりそうだ。
 冒頭で炎症再生学会理事長の森田育男氏も指摘したとおり、iPS細胞の実際の患者への応用には、多くの問題をクリアしなければならない。最も重要なのが、ヒトにiPS細胞を用いた際の安全性を確立することだ。海外では2010年からiPS細胞から作った網膜の移植に関する臨床試験が始まっているが、安全性を確認して実際に治療が受けられるようになるには、10年以上かかる。

 現在進んでいるiPS細胞研究は、ひとえに病気の治療を目的にしている。苦しむ患者さんやその家族を救うことが最も重要なのは当然のことだ。しかし、そこで得られた研究成果の中には、細胞レベルでの若返りや健康維持にも応用できる医療技術がたくさん隠れている。

筋肉細胞もiPS細胞から作れる可能性大

 ヒトiPS細胞から筋肉細胞を作製することに成功したことが2013年4月23日のオンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。これは京都大学、名古屋大学、香川大学などの共同研究によるもので、ある筋肉の難病の原因と治療法の研究のために、iPS細胞を用いて筋肉細胞を作製し、病態モデルの再現に世界で初めて成功した。この成果によって、iPS細胞から筋肉細胞を再現性高く安定的に作ることが難しいという常識はくつがえり、筋肉の難病に対する新しい治療法や治療薬の開発につながると期待されている。さらにもっと筋肉細胞の再生技術が進めば、加齢による筋肉量の減少を表す「サルコぺニア」(老年症候群のひとつ)の治療にも役立つ可能性がある。

アルツハイマー病の原因や治療、予防法も解明?

 高齢者に多いアルツハイマー病は日本に約150万人いると言われ、記憶や認知機能が低下し、徘徊や妄想などが生じる病気。詳しい原因は解明されておらず、治療法も確立されていない。そこで京都大学を中心とした研究グループが、アルツハイマー病患者のiPS細胞を作製し、その細胞を疾患モデルとして分析した結果、神経細胞の中にアミロイドβというタンパク質が蓄積することで、細胞内にストレスを起こし、それがアルツハイマー病の原因になっている可能性があることを指摘。2013年2月の米国科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版で公開された。