第3回 景気だけでなく若さもUP?! アベノミクスが見据える再生医療

無限に増殖、何にでもなれるiPS細胞

 ではiPS細胞はどのようにして作られるのか? たとえば患者の皮膚から細胞を採り、それに数種類の遺伝子を組み込んで数週間培養すると、もとの皮膚細胞がリセット(初期化)され、さまざまな組織や臓器の細胞に分化でき、無限に増殖可能な幹細胞になる。こうしてできた細胞が人工多能性幹細胞、通称iPS細胞(induced pluripotent stem cell)だ。

 iPS細胞は、従来までヒトの受精卵を用いなければ作れなかった幹細胞を、ヒトの皮膚から採った細胞から作ることを可能にした。受精卵の使用に関しては、倫理的に問題があると指摘されていたが、iPS細胞は見事に最も大きな倫理の壁を乗り越えた。さらにiPS細胞は移植する患者自身の細胞から作るために、不適合を起こすことがほとんどなく、移植の際にも安全性が高い。この偉大な研究を2006年、世界で最初に発表したのが、ノーベル賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授だ。

 最初に山中伸弥教授らがiPS細胞を作った時には、がんを発生させるリスクを伴う遺伝子などを使ったため「がん化リスク」という壁が立ちはだかった。しかし2011年に山中教授らは、がん遺伝子を使わずにiPS細胞を作り出すことに成功し、がん化リスクが低下した。

線維芽細胞から樹立したヒトiPS細胞のコロニー(集合体)(コロニーの横幅は実寸約0.5ミリメートル)=京都大学教授 山中伸弥(画像クリックで拡大)