第6回 113番新元素の名前は何になる?

 ふたつめ。技術的な応用。

 原子核物理の知見は、本当にあちこちで応用されている。その最悪な方面について語ると核兵器になってしまうわけだが、現在森田さんらが進めている領域の研究は、さいわいそのような方面での活用はありえそうにない。

 超重元素ではないが、原子核物理が医療で活用されている実例をひとつ。PET(ポジトロン断層法)検査装置は、最近多くの病院で導入されている。脳機能の検査やがん診断の現場で活躍しており、身近に体験した人も多いはずだ。

「軽い原子ですけど、フッ素18とかですね。ベータプラス崩壊といって、陽電子を出して酸素18に変わるんです。半減期が2時間くらいで、化学的な性質も適していて、お医者さんが使いやすいんですね。出てくる陽電子で、映像を撮るわけです」

 そして、最後に、社会的な影響。

「僕らは税金を使って仕事をしているので、ただ原子核物理をやってますという以上のものが必要になるんです。新しい元素は、発見すると先取権がもらえて、同時に命名権が与えられる。これが非常に大きなことです。ウランより原子番号が上のものが1つもわかってないときに、93番のネプツニウムという元素をアメリカの研究者が発見して、次にプルトニウムも発見した。実はこれ、原爆を作ったマンハッタン計画に深く関わっていて、プルトニウムの場合は核兵器にできる利用価値がすごくあったわけです。それで戦争中は情報が出てこなくなるんですが、戦後彼らはすごい知識を蓄積していて、93番から103番までの元素は全部アメリカの発見なんです」

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