第4回 とある超重元素の検出装置

「ビームの全エネルギーは、非常に小さいですよ。我々が使ってるのは、350メガエレクトロンボルトですね。電子ボルトともいって、エネルギーの単位。電子ボルトからは、ワットへの計算がしやすいんです……(以下省略)」

 省略した部分は、紙に書いて計算していただいたわけだが、ぼくの感想はというと、物理学の人って、桁(オーダー)を見積もることをまず大事にするよなあ、ということ。計算しやすいようにどんどん数字を丸めていって、しかし、桁の見積もりは外さない。電卓やコンピュータを使うのではなく、ざっくりさくさくと手計算で見積もってしまう。

 もっとも、この単位の変換はわりときっちりと計算して、照射されるビームのエネルギー量は175ワットと弾き出した。

 それこそ、家庭で使う明るめの天井蛍光灯2部屋分くらいなのである。さらに言えば、このうち実際に標的に吸収され伝わるエネルギーは、もっと少なくてわずか3ワットくらいだそうだ。標的になっているビスマスが0.5ミクロンの薄膜であること、狭い範囲に照射されることなどから、1秒間で10万度という極端な話になるようだ。

 さて、ここまできて、やっと亜鉛70のビームから、ビスマス209の薄膜にエネルギーが伝わった(原子核がぶつかった)。その結果、ごく希に2つの原子核が融合し、原子番号113の超重元素の原子核が生まれる。それをどうやって検出するか。

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