第3回 「光速の10%でそっとくっつける」超重元素合成

 亜鉛70というのは、まさに質量数278から逆算したものなのだ。ただ、自然界にあまりたくさんあるものではない。

「自然界の亜鉛は、亜鉛64、質量数が64のものが一番多い割合で存在していて48%を占めているんです。亜鉛70は、0.63%。なぜ亜鉛70かというと、できるだけ中性子の多いものを使いたいからなんですね。目標にする113番元素は、中性子が少なすぎると不安定です。でも、この亜鉛70がめちゃくちゃ高価なんですよ。アイソトープ濃縮されたものを買わないといけないので」

 どれくらい高価かというと「1グラムでウン千万円」のオーダーだそうだ。どれだけお金のかかる研究だろうかと心配になる。ぼくが問うと、森田さんはその場でこれまでの実験で使った亜鉛70の量を手計算しはじめた。

「1秒間に、亜鉛70の原子核を3×10の12乗個。それだけの玉を打ってるんですね。これに3600を掛けたら1時間分で、24を掛けて1日分で……さらに大体570日ぐらい照射したので、総照射個数が1.3×10の20乗ぐらい。10の20乗のオーダーになるとグラムで言える程度になるんです。6×10の23乗がアボガドロ数ですから……」

 というふうに計算して、結論は、14ミリグラム、0.014グラム程度、ということになった。3個の113番元素を合成するためにビームとして打ち込んだ亜鉛70はその程度、ということで、ややほっとしたのだった。

森田さんはその場でささっと手計算をしながら説明してくれた。(写真クリックで拡大)