第3回 「光速の10%でそっとくっつける」超重元素合成

 超重元素である113番元素は、埼玉県和光市にある理化学研究所仁科加速器研究センターの重イオン線形加速器(RILAC、ライラック)を使って合成された。2004年と2005年にそれぞれ1回、2012年に1回、計3回、である。

「合成」というと目で見えるような塊を生成物として想像するかもしれないが、ここではあくまで原子核1個単位の話だ。つまり、合計3回、3個の原子核を創り出した、ということ。

 その方法は、説明してもらうと意外なほど単純な「足し算」だ。

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「原子番号30質量数70の亜鉛をビームにして、原子番号83質量数209のビスマスにぶつけるんです。単純に足してみてください。原子番号は陽子の数ですから、30と83を足して113になります。質量数のほうは足すと279。2核が融合した直後の“複合核”は少しだけ励起(興奮)していて、すぐに1個の中性子を吐き出し、目的とする質量数278の113番元素が合成されます。鉛やビスマスを標的にするのはドイツのGSI(重イオン研究所)という研究所が得意にしていたやり方で、107、108、109、111、112番新元素の合成に成功していました。我々は同じ方式を採用しビスマスに、亜鉛70をぶつけることで113を狙ったんです」

2013年5月号特集「未知なる元素をつかまえろ!」
本誌では超重元素合成の世界情勢をレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。また、電子版では未知の元素の合成方法や、新元素の横顔を紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。