第9回 西表島が見えた!

 私は食いしん坊で、食べる夢を見ることが多い。自分では気がつかないのだが、寝ている時に、たびたび口をもぐもぐしているらしい。寝起きにたらっとよだれが垂れていて、恥ずかしい思いをする。

 縄文号とパクール号は、台湾を出て西表島に向かっていた。初日の航海は夜を迎え、カヌーは星を頼りに順調に進んではいたが、私はというと、前夜に眠れなかったことも影響してひどい睡魔に襲われていた。ナビゲーターとして船尾に立ったまま、とうとう夢を見始めてしまった。

 どうやら食べ物をあさる夢を見ていたらしく、私の目の前で舵を握るイルサンの頭や首筋、肩をまさぐっていた。イルサンも「なんだなんだ」と言って後ろを振り向く。「ちょっと寝たほうがいいんじゃないか」と言いながらも、私の奇妙な行動にニヤニヤしている。

 私も完全に寝ているわけではない。朦朧としているだけで、食べ物を探しているらしいと言う自覚はある。「このまま寝てしまったらまずい」とも思っている。しかし瞼が垂れてくる。がくんと膝が折れて我に返り、一旦、ライチを取りに行って再び船尾の定位置に戻った。クルーのグスマンとダニエルはビニールシートを被って寝てしまっている。ナビゲーターは私一人なので、やはり寝るわけにはいかない。

縄文号から夕陽を見つめる乗組員。(提供:関野吉晴)(写真クリックで拡大)