第2回 「我々が見つけた、113番元素はここですね」

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「我々が見つけた、113番元素はここですね」と森田さんは核図表を指さしてくれた。

「もちろん同位体がありまして、これは質量数278のものです。半減期が1.4ミリ秒。ほんの一瞬しか存在できず崩壊していきます……その6つ右隣に質量数284の同位体があります。半減期は0.5秒。中性子が6個違うだけなんですが、それだけで寿命が約千倍も違ってくるんですね。こちらはロシアとアメリカの合同チームが、見つけたと言っています」

 113番元素といっても、原子核は一種類ではなく様々な同位体がありえる。そのうち、どれかを合成出来たと確認できれば、発見者として認定され、命名権も得られる。判定は「国際純正・応用化学連合」(IUPAC)と「国際純粋・応用物理学連合(IUPAP )が推薦するメンバーによる作業部会が行う。もともと元素というのは化学の領分だったので、化学の国際学会が中心になるものの、今や核物理の知識・方法なくしては語れないためにそちらの専門家も含めて審査にあたるそうだ。本当に新元素が合成できているのかどうか。人類にとって未知の物質であるわけだから、いくつものハードルをクリアしないと審査の対象になりえない。

 森田さんは、いかにして113番元素を合成し、そこまでたどり着いたのか。超重元素合成、ぼくが言う「超重元素の錬金術」は、いかにして行われたのだろうか。

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つづく

森田浩介(もりた こうすけ)

1957年、福岡県生まれ。理学博士。独立行政法人理化学研究所仁科加速器研究センター・超重元素研究グループ・グループリーダー(ディレクター)、および、超重元素合成研究チーム・チームリーダー。九州大学大学院教授(理学研究院物理学部門基礎粒子系物理学)。1984年、九州大学理学研究科(物理学専攻)博士後期課程の在学中に、理化学研究所に研究員補として入所。主な研究分野は「超重元素の合成」。長年の努力が実り、2004年、日本の科学史上初めて、元素番号113の新しい元素の合成に成功した。2005年度第51回仁科記念賞受賞。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider