第2回 「我々が見つけた、113番元素はここですね」

 お話を伺う最初の時点では、ぼくたちの共通理解は周期表だったのだが、そのうち、それでは足りなくなって、森田さんは別の図表を持ち出してきた。

見やすいように3つに分割された核図表。National Nuclear Data Center, information extracted from the NuDat 2 database, http://www.nndc.bnl.gov/nudat2/より(画像クリックで拡大)
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「これ、核図表というんです。これまでに分かっている原子核が全部書かれてるんですね。横軸が中性子の数で、縦軸が陽子の数。縦軸の数を固定して水平に見ると、同じ元素で中性子の数が違う同位体の原子核ということになります。本当は1枚の絵になるんですが、でかくなりすぎちゃうので、まあ、こんなふうに分割して見ているわけです。実験核物理がやってきたのは、こういった核図表を1個ずつ、マス目を広げていくようなことなんですね。超重元素の合成というのは、その中でも、マス目を縦方向に伸ばしていく仕事です」

 核図表のマス目を縦方向に辿っていくというのは、陽子数が増えていくことであり、つまり大きな原子番号の新しい元素を発見することにほかならないわけだ。

 核図表では扱う原子核の数が非常に多い。周期表よりもかなり込み入ったものだというのは一目で理解してもらえるだろう。

 また、各原子核の安定性を「高さ」として表現した立体図表にすると、細かい点は見にくいものの、全体の構成が分かりやすくなる。安定なものは低く、不安定なものは高く示される。言い方を変えると、背が高いものはエネルギーが高い原子核で、低いものはエネルギーが低い。単体で存在するために高いエネルギーが必要か、低いエネルギーでも存在できるか(前者は不安定で、後者は安定)という言い方もできる。

レゴブロックでつくった3次元核図表。横軸が中性子の数、縦軸が陽子の数のため、左手前ほど原子核の質量が小さい。(写真クリックで拡大)

 森田さんの部屋がある建物の1階には、この「3次元核図表」がレゴブロックで表現したものが展示してあった。エネルギーが高い原子核は、例えは陽子だけ、中性子だけといった、質量が小さいところに巨大なピークがある。また陽子・中性子が多ければ多いほど(重たいほど)、エネルギーが高くなっていく。高エネルギーの山に囲まれた「中央」部分にくぼみがあり、そのあたりが安定した元素、原子核が存在し得る領域だ。こういった安定同位体がつらなるくぼんだ部分を、量子力学の創始者の1人ヴェルナー・ハイゼンベルクの名を冠して「ハイゼンベルクの谷」と言う。谷の中でも最も窪んでいる谷底の部分は鉄56で、つまり、宇宙で一番安定した原子核といえる。