第1回 日本人初!の“超重元素の錬金術師”

「──例えばカルシウム40の原子核は、陽子が20、中性子が20でして、両方とも魔法数なので、とても安定で固いんです。もう1つカルシウム48というのがあって、それも20と28の組み合わせ、陽子が20、中性子が28個なんですごく安定なんですよ」

 原子核の研究者の間では、魔法数についての興味、つまりどんな条件で、原子核が安定するのか、さらに重たい元素についての理論的な予想があり、超重元素への興味がかき立てられていった経緯があるのだそうだ。

「──原子核が重たくなっていくと、陽子同士の反発力のために、陽子はこぼれ出て中性子が多いほうが安定するんですね。鉛208の原子核は、陽子が82個、中性子が126個。魔法数で一番大きいものを組合わせた二重魔法核で、安定しています。でも、ひょっとすると、もっと大きな陽子の魔法数があって安定した原子核があるのではないかと、1960年代後半に理論の研究者が言い出して原子核物理屋の興味をひいたんです。それまで決して長寿命では存在しえないだろうと思われていた元素が長寿命で存在すれば、全く未知の性質をもつ物質ができる可能性があるのではないか? などとね。その時は、次の陽子魔法数は114ではないかと言われていました。つまり114番元素の原子核。それで70年代に世界中で実験されたんですが、みんな失敗しまして。やはり、一足飛びに114番目の元素など合成できない、1歩ずつ重たい元素を作っていくしかないという流れになってきたわけです」

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つづく

森田浩介(もりた こうすけ)

1957年、福岡県生まれ。理学博士。独立行政法人理化学研究所仁科加速器研究センター・超重元素研究グループ・グループリーダー(ディレクター)、および、超重元素合成研究チーム・チームリーダー。九州大学大学院教授(理学研究院物理学部門基礎粒子系物理学)。1984年、九州大学理学研究科(物理学専攻)博士後期課程の在学中に、理化学研究所に研究員補として入所。主な研究分野は「超重元素の合成」。長年の努力が実り、2004年、日本の科学史上初めて、元素番号113の新しい元素の合成に成功した。2005年度第51回仁科記念賞受賞。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider