第40話 これは!『南極物語』で見たシーン。脱走犬、ズート。

 良く見ると、等間隔に繋がれている犬たちの間を、何者かが縫うように自由に走り回っている。

 それは、雪のように真っ白なメス犬の、ズートだった。

 首輪が外れて、自由になったのが嬉しくて仕方ないようで、飛び跳ねながら、他の犬たちに挨拶に回っているのだ。

 そんな挨拶など、他の犬たちは許すはずがない。

「抜け駆けは、許さん!」「なんだ、お前だけ!」とばかりに、怒号の吠えを浴びせて、怒りまくっている。

 トーニャは、そんな様子をじっと眺めて、ズートが一通りみんなに挨拶をし終わると、「ズート!」と名前を呼んだ。

 耳をピンと立てて、ズートはこちらを見た。

 そして、名前を呼ばれたことが、嬉しくて仕方ないように、全回転で尻尾を振りまくって、こっちに走ってきた。

「遊んでくれるの~」

 尻尾ふりふり。ふりふり。

 ズートは嬉くて、嬉しくて、トーニャに飛びついた。