第40話 これは!『南極物語』で見たシーン。脱走犬、ズート。

 彼らの声に負けて、遊んであげてしまうと、今度は、不公平にならないように、総勢43匹の犬を平等に扱わなければならなくなるから、ここは、トーニャも私も、完全無視を決め込んだ。

 次第に犬たちは、声を枯らしはじめ、それでもどうにか私たちに近づきたい、手を出し、足を出して、首吊り状態になっている者もいる。

 そんな犬たちを横目に見ると、「犬って、なんて純粋にお馬鹿さんなのだろう?」と、深いため息も出るのだった。

 壊れているブレーキの部分を、トーニャと一緒に覗き込んでいると、いきなり周囲の犬たちの鳴き声が、けたたましくなった。

 まるで、不審者でも発見したように、その声は、緊急事態を告げるような吠え方である。

「なに、なに?」と、トーニャも私も首を上げて周りを見渡した。でも、誰もいない。

 犬たちの吠え方が、更に興奮を増してきた。

「なに? なんだって言うの?」

 私たちは、再びドッグヤードを注意深く見渡した。でも、やはり誰の影もない。

 するとトーニャが、「あそこ!」と指を差した。