第50回 不思議な声と巣をもつ熱帯の鳥

オオツリスドリ(スズメ目:ムクドリモドキ科)と巣
Montezuma Oropendola, Psarocolius montezuma and its nests
枝先からぶら下がるのが巣。飛び立つところを連写し、4枚の写真を合成した。
体長:40~50 cm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 オロオロオロオロオロロロロッ。

 なんとも説明しにくい音が聴こえてくる。
 長さは1.5秒ほどで、尻上がり。
 水中でたくさんの泡を吐きながらしゃべっているようでもある。

 ここはコスタリカ、熱帯研究機構(Organization for Tropical Studies)のラ・セルバ生物研究所。その宿の前にある背の高い木に、一度聴くと耳から離れない音の持ち主がいた。オオツリスドリ。中米のカリブ海側でよく見かける大型の鳥の一種だ。

オオツリスドリ(スズメ目:ムクドリモドキ科)
Montezuma Oropendola, Psarocolius Montezuma(写真クリックで拡大)

 鳴き声だけではなく、鳴く姿も面白い。黄色い尾を上げ、鉄棒で前回りをするほどの勢いで前のめりになりながら発声する。「オ~ッと!よう落ちひんもんや~」と見ていて感心する。

 オオツリスドリの一番の特徴は、木の枝先にいくつも吊り下がっている細長い巣。名前の由来でもある。長さは1メートルほどで、乾燥したやわらかい草木の繊維でうま~く編まれている。おしゃれな肩掛けカバンといったところだ。

 親鳥は木から飛び立つと、またどこからともなく数十センチの細長い「紐」をくわえて戻ってくる。そしてくちばしで編み込んでいく。枝の先から吊り下がるその巣には、ヘビなど地上からの天敵が近寄りにくい。また群れで子育てをすることで、敵を察知する能力が増すのだろう。



オオツリスドリ(スズメ目:ムクドリモドキ科)
Montezuma Oropendola, Psarocolius Montezuma
コスタリカで見られる3種のオオツリスドリの仲間の中で一番大きい。黄色い尾と「仮面」をかぶったような顔が特徴的だ。
体長:40~50 cm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
朝と夕方前、にぎやかに活動し、巣作りに励んでいた。(写真クリックで拡大)
昼間、巣の周りはシーンとしている。(写真クリックで拡大)
クリガシラオオツリスドリ(スズメ目:ムクドリモドキ科)
Chestnut-headed Oropendola, Psarocolius Montezuma
よく見かけるもう一種のオオツリスドリの仲間。とあるリゾートホテルの敷地に設置された「えさ場」に来て熟したバナナをついばんでいた。
体長:28~36 cm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html