第39話 古き良きアラスカの知恵に、目が点!

 あるとき、私は、薪ストーブの底に溜まった灰をバケツにかき出して捨てに行こうとすると、オリバー爺さんに呼び止められた。

「知っとるか? 灰はの……、とても役に立つものなんじゃ。捨ててはならんぞ」
 と、静かな声で言う。

 このロッジの裏に、灰を溜めておくドラム缶があることを知っていたので、私はそこら辺に捨てるつもりはなく、
「はい、分かってますよ」と、笑みを返した。

 すると、オリバー爺さんは、どこか私の目の奥のほうを見透かすように顔を覗き込んで、
「何に役に立つか、知っておるか?」と聞いた。

 私は、畑仕事が好きなので、「もちろん」という顔をして、灰は畑の土に良いことを話すと、
「それだけではないぞ」と、オリバー爺さんは話しはじめた。

 それは、私の想像を超えていた。

「灰はの、洗剤じゃ。ゴールドラッシュの時代は、灰で体も服も洗ったんじゃ」
「え、洗剤?」

 そう言えば……、墨石鹸は、汚れが良く落ちる。それと一緒かな? と私は思った。

「灰はの、ベーキングパウダーの代わりでもあった。昔は、灰でパンを膨らませたんじゃよ」
「え? 膨らし粉?」

 日本では、山菜のあく抜きや、こんにゃく芋に含まれるシュウ酸の中和に用いられているが……。パンが膨らむなんて、はじめて聞いた……。