第8回 島影、星、五感を使って航海する

縄文号を正面から。著者は主に船尾に立ってナビゲーションをした。その手前がキャプテン。ほかのクルーはバチャバチャと呼ぶ桟敷などにいた。(提供:関野吉晴)(写真クリックで拡大)

 成功港から目的地の西表島西部まで直線で280kmある。方角は北が0度だとすると、東に60度になる。私たちのカヌーは黒潮によって北に流されるので、真東に向かって行けば目的地近くに着けると、計算した。

 台湾からの航海では、私は縄文号に乗った。東に向かうと、風速10m以上の強い南風が起こす3メートルをこえる波を横から受けて進むことになる。南風が吹き続け、波の方向も変わらない。帆は常にカヌーの左側で風を受ける。船体は常に左側に大きく傾いていた。

 一回だけ、左側に倒れるのではないかと思うほど傾き、キャプテン以外は皆反対の風上側に立ってバランスをとった。さいわい転覆はのがれ、皆で目を合わせて苦笑いした。その後も左側のバチャバチャ(船体の横に広がる竹の桟敷。寝たり、座ったり、オールを漕いだりする)はほとんど沈んでいた。

 真横から風を受けての帆走はスピードが出ない。船体を真東から少し北側に向けてやると、やや後方から風を受けるので、スピードが上がる。しかし、もう一艘のパクール号は船を真東に向けて進んでいるので、徐々に離れていく。そうすると、やがてパクール号が近寄ってきて、「そっちに向かうと、西表島に着けませんよ」と渡部純一郎が大声でアドバイスしてくる。縄文号も東に向きを変えるが、また北に船首を少し振る。その繰り返しだった。