地球最南端の島々

 ケープホーンの上での貴重な2時間を過ごし、多くの兵士に送られて、リエンテール号からの上陸組はまた本船に戻った。そしてすぐに出航だった。おそらく次の目的地の天候や海流の関係で、出航チャンスというのが常に微妙だっただろう。

「まさか」と思ったがリエンテール号はそのままドレーク海峡に出ていった。ケープホーンから南極まで約1000キロある。その広い海域に大きな陸地は存在せず、このあたりを循環する偏西風や海流がまったく何ものにもへだてられることなく風は常に激しく吹きまくり、海流は勢いをましていくだけの海域だった。「絶叫する60度線」と呼ばれる所以である。だんだん親しくなってきたフェルナンドという砲兵にぼくは「この船はもしかすると南極に向かうのか」と聞いた。砲兵は笑いながら「それはない」と言った。それではいったいどこを目指しているのだろう。

 やがて吠える海峡によってリエンテール号は激しく翻弄されはじめた。海峡というには広すぎてまったく陸地の見えない嵐の海を船はローリングとピッチングを複雑に交差しながらひたすら進んでいく。ときおり船尾のほうででっかい音がするのは、軍艦がとてつもなく巨大な波の背に乗ってしまってスクリュウが空中でカラ回りしている音なのだった。

 ありがたいことにぼくは体質的に船酔いというものにはならないのだが、その段階では荒れている海に慣れている筈の水兵たちも船酔いで倒れる者がたくさん出始めていた。

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