彼女が、カメラの前で語った内容は、概ね以上のようなものでした。

 ニュースで流れた写真には、まるで吸血鬼に噛まれたかのように、痛々しい傷跡が首に残されているのが、鮮明に写っていました。

 みなさんはこのニュースを聞いてどう感じたでしょうか。

 やはりオオカミは人間を襲う危ない生き物。恐ろしい話だと感じたのではないでしょうか。

 しかし、ぼくがこのニュースを聞いたとき、彼女に起きた不幸な出来事に同情したものの、なにか腑に落ちない感じがありました。

 まず襲ったのは本当にオオカミだったのでしょうか。

 人気のない荒野のど真ん中。立っている人間の首に噛みつくなんて、飼い犬や野犬による仕業ではなさそうです。

 彼女が語った、全長6.2フィート(=189cm)という大きさも、最大のイヌ科動物であるシンリンオオカミにとっては、この北の地方では想定の範囲内です。

 首に残された歯形も、専門家によれば、オオカミに襲われたシカにつく歯形によく似ているそうです。

 では、確かに噛み付いたのがオオカミだったとして、なぜいきなり彼女を襲ったのでしょうか。

 オオカミは人間を食べにくるから当然のこと。

 そう考える人もいるかもしれません。

 しかし、ぼくのこれまでに得た知識と経験からは、オオカミが人間をおいしい食べ物だと思って襲ってくる話は、物語の中だけのことだと思っています。

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