第38話 森の病から心を救う、元ヤンキー巡回牧師?

 一応その牧師は、聖書の1文を呼んで、教えを説きはじめた。

 聖書のことは良く分からないけれど、テーマは、仲間ということらしい。

 しかし、見れば見るほど、その牧師は、まるでコンビニ前でウンチング座りをしていたような、元ヤンキータイプなのである。

「トーニャ、あの人、本当に牧師?」私はこそっと、尋ねた。

「そうよ」トーニャが言う。

「元、ギャングみたい……」私は再び、こそっと言った。

 するとトーニャもこそっと言った。

「そうかもね……。アメリカでは、刑務所のなかでキリストの教えに目覚めて牧師になる人も多いから……」

 ところが、意外にもその牧師は、優しい目で、柔らかい口調で話してくれる。

 その深く博愛に満ちたような目を見て、私は証拠もなく、想像の世界に羽ばたいてしまった。

 きっと、この巡回牧師さんは、さまよえる森の若者たちの心を救う、リアルヤンキー先生に違いない!

 カッコイイ……。

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/