第38話 森の病から心を救う、元ヤンキー巡回牧師?

 このアラスカでは、教会のない森の生活者のために、わざわざ飛行機に乗って、牧師が聖書を教えにやってくる。

 実は、森の生活というのは、まるで夢のスローライフのようだけれど、アラスカにおける実態は、意外にシビアなのである。

 自然の厳しさに打ちのめされて、無気力になる人もいれば、人との関わりがなく、孤独感に襲われ、鬱になる人も多い。

 森の生活によるアルコール中毒や、鬱、自殺というのが、アラスカでも深刻な社会問題になっている。

 40匹以上の犬たちと一緒とはいえ、1人でこのミンチュミナに暮らしてきたトーニャも、森のなかで家族だけで暮らしてきたスティーブも、この巡回牧師を楽しみにしているのだった。

 熊のような顔から、一生懸命に紳士になろうとするトビエスの顔を覗き込んで、私は言った。

「どうせなら、全部剃ったほうがいいと思うよ~?」

 すると、トビエスのみならず、スティーブも声を揃えて言った。

「オ~ノ~! 髭がなくなったら、男じゃなくなるよ」

 2人とも若いのに、なんと古臭い考えなのだろうか……。

 どんなに髭が立派でも、夕飯の残りを付けているようでは、紳士に見えないってもんよ~。