第37話 食堂の太っ腹おばちゃん化する私。
これから橇を引く季節になるというのに、足の筋肉は細いし、骨も出ていて、全体的に角々している。
確かに、デブ犬にしてしまうほど食べさせてはいけないけれど、ほんの少しだけでも多くしてあげたかったのだ。
これは、どうしようもない……。
母性というか、なんと言うか、性分なのだ。
そうは言っても、どう見ても犬たちは、まだ痩せている方なのである。
だから私には、トーニャの言う「ちょっと太った」という意味がまったく分からなかった。
トーニャという女性は、有名な犬橇レースにも携わってきた犬橇マッシャー夫婦の間に生まれた。
他に兄弟姉妹のいない彼女は、子供の頃から橇犬たちと共に育ち、大人になった今でも、橇犬たちと共に生きている。
北米でも有名なユーコンクエスト犬橇レースの最年少完走記録保持者でもあって、トーニャは、まるで犬橇の申し子のような女性なのである。